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仮想通貨格付けの意義と個人投資家がどう使うか

1月24日にリリースされる仮想通貨の格付けが世界中で注目されています。AAAの格付けは価格が上がるから買うといった短期的な目的にだけ使うものではありません。格付けの本来の役割や機能を知っておけば、格付けに振り回されることがなくなります。ここでは格付けの意義について学んでいきたいと思います。

 

世界初の仮想通貨格付け WEISS RATINGS

仮想通貨格付け

 

まず格付けは企業や国の信用力をAAAやBBBといった記号にして、序列化、ランキングにしたものです。この意義は、金融マーケットにおいて、金融機関や大口投資家といった情報を持つものと、個人投資家といった情報を持たないもの、この情報の非対称性を是正するのが1つの目的です。また、得体の知れないものを探して買うという取引コストや情報収集コストを削減することができます。

 

仮想通貨格付けで生まれる新しい付加価値情報

 

格付けが果たす役割としては、情報生産という考え方があります。これは、市場に参加する人たちが公開されている情報以外の新たな付加価値情報をもたらすということです。

いま、仮想通貨に投資している人たちは、恐らくチャートをメインに、そして要人発言や各国の規制情報を頼りに投資し、また技術的な側面ではホワイトペーパーやテレグラムといったコミュニティ情報から投資材料を探していると思います。

客観的で同じ尺度で評価する格付けは新しく有益な情報となります。これが格付けの情報生産という機能です。

 

格付けは個人による情報収集の限界に役立つ

 

投資家、特に小規模な個人投資家にとってコミュニティ内の情報、市場全体、仮想通貨業界情報、価格情報を入手し分析するのは容易ではありません。今回の仮想通貨格付けは、1000以上のチェックポイントから12種類の仮想通貨を格付けします。

 

個人では到底無理な分析範囲です。個人投資家達ができない大規模な情報収集、分析を格付け会社が担うのです。格付け会社は無償奉仕ではありませんので、情報料を設定する場合もありますし、仮想通貨格付けのように企業認知度向上のために発表する場合もあります。

 

仮想通貨格付け情報をどう利用するか

 

大雑把に言えば、AAAは買い、CCCは買わないといった投資ルール設定に役立てます。一般的には、投資家と受託者のエージェンシー問題の解決に役立てています。投資家は投資資金を運用会社に委託します。

 

この時、投資家をプリンシパル受託者(委託された側)をエージェントと呼びます。この2者間でルール設定をする際に格付けが利用されます。具体的には、BB+以下の対象には投資はしない、BBB以上が投資適格といった具合です。

 

WEISS RATINGSが格付けする12種類のコイン

格付け仮想通貨

 

もしこのルール設定がなければ、エージェントは手数料の高い格付けの低い債券や株式を積極的に購入し、最終的にはプリンシパルに悪影響を及ぼす可能性があります。個人投資家にとっては投資家と受託者は同一人物ですから、エージェンシー問題は発生しません。

 

そこで、例えばガチホールド基準に使えるかもしれません。AAAになったからといって、未来永劫値上がりが約束されているわけではないので、格付けの目的や機能をしっかりと考慮して投資材料の1つとして利用すべきです。

1社による格付けを鵜呑みにして良いか

 

米国における債券や株式の格付けにおいては、スタンダード&プアーズ社、ムーディーズ社の寡占市場ですが、1社独占ではありません。今回、仮想通貨格付けを行うのは1社だけです。1社の情報を鵜呑みにして投資して良いのでしょうか?

 

複数の格付け会社の間に格付けの格差がある場合を考えます。例えば、格付けをするA社がビットコインをAAA、B社がビットコインをBBBと格付けします。この格付けの差をレーティング・スプリットといいます。この存在をどう考えるかが重要です。

 

この格付の差を好意的に捉えるなら、格付け会社が競合し投資家により多くの情報を提供してくれていると考えることができます。一方で、格付けの本来の目的は情報格差の是正にあるにも関わらず、格付けがバラバラしていては情報が複雑になって本来の意味をなさないと考えることもできます。

 

いずれにせよ複数の格付けがあって成り立つ考え方です。仮想通貨の格付けは1社だけ行います。したがって、1社による格付けがAAAとしても、それすなわち価格情報を保証するものではないし、多様な考え方の1つに過ぎない点には注意が必要です。

 

Weiss Ratingsの良い所

 

今回格付けするWeissRatingsの格付けは信用に値するのでしょうか。格付け会社のビジネスモデルの1つに、発行体手数料ビジネスモデルがあります。これは、債券等を発行する発行主体が、自らの債券を「格付けして欲しい」と格付け会社に依頼し、依頼に応じて手数料を得るビジネスモデルです。

 

お金をもらって格付けするわけですから、甘い格付けになるのは容易に想像できます。しかし、Weiss Ratingの会社は、いかなる格付け対象であっても、発行主体から報酬を得るようなビジネスモデルではありません。仮想通貨市場においては例えばリップルを発行するリップル社から報酬を得るようなことはないと断言しています。

この点では、1社の格付けであっても公平に取り扱われると考えられます。

 

以上、仮想通貨格付けをどう考えるかの考察でした。