ビットコインの発行上限の仕組み
ナカモトサトシ(Nakamoto Satoshi)によって生み出されたビットコインは、生まれながらにして発行上限が決められています。それは、692万9999番目のブロックが生成されると、ビットコインの発行上限である2100万枚のビットコインに到達します。
日本円や米ドルには発行上限はありません。その理由は、発行母体の中央銀行がインフレをコントロールするためです。設計当初からインフレが根本的に起きない貨幣を作ることを目的としたビットコインは、インフレ抑制をビットコイン上限設定に求めています。
例えば、ビットコイン上限の2100万枚を日本人口1.27億人で分配すると考えてみましょう。すると、1人あたり0.16BTCです。発行上限以上のビットコインは生成されませんから、0.16BTC以上の保有ができません。従って、需要量が増えれば市場原理が働き、自然と価格が上昇します。
また、マイニングで得られるビットコインの数は時間とともに減少していくルールが採用されています。これは、つまり出来るだけ早くマイニング(採掘)に参加したほうがいいといインセンティブが働いていることになります。
採掘で得られるビットコインが減少すること時間の概念を「半減期(Halving/Half-life)」と呼びます。ビットコインの半減期は正確にはブロックの生成速度で計算します。21万ブロックが生成される(およそ4年になるように計算されています)ごと減少していきます。
時間が経てば経つほど採掘できるビットコイン量が減るため、埋蔵量に上限のある金(ゴールド)に近い存在といえます。ビットコインが金だと言われる所以です。このように発行上限の設け、報酬額を徐々に減らすことが、インフレを抑える仕組みとなっています。
ビットコインの供給量カーブ
ビットコインのマイニングで得られる報酬が減少すると言いましたが、具体的には採掘される210,000ブロック毎に、得られる報酬ビットコインが半減(50%カット)する取り決めです。ビットコインが誕生して最初の210,000ブロックまでではビットコイン50枚がマイニングの報酬でした。次の210,000枚は25枚、そして12.5、6.25、3.125…と半減を繰り返していきます。では、どれほど小さい値まで半減するのか?その答えが、上限枚数2100万枚の決定に大きく影響します。
ビットコインの採掘報酬の減少グラフ
2100万枚到達の最後のマイニングで得られるビットコインは0.00000001 ビットコイン(1億分の1)です。これがビットコインがこれ以上半減できない最小単位なのです。この単位は発案者の名前から付けられ1satoshiという単位名がついています。1satoshiがビットコインの半減の終着点であり、これ以上は採掘しても何も得ることができないため採掘完了となるわけです。
そして、その最後の採掘の日がやってくるのは、2142年ごろです。これは、0.00000001コインになるタイミングが692万9999番目のブロックであり、1ブロックが10分毎に採掘されるとして計算すると、つまり132年間。2009年から計算して2142年には採掘完了となる予想です。この年付近ではマイニングをしても、得られる報酬は極わずかということになります。
ビットコインの半減期とムーアの法則の関係
ここまではインフレ抑制のために発行上限が決まっていて、マイニングから得られる報酬が減少していくということを説明してきました。では、なぜ50%OFF(半減)なのでしょうか?これは、「ムーアの法則」が関係しています。ムーアの法則はご存じの方も多いと思いますが、半導体の集積密度が2年毎に倍増するという経験則です。
これをビットコインの採掘作業に当てはめると、コンピューターの処理速度が2年毎に倍増するなら、10時間費やしていた価値は、2年後にはは5時間で得られるわけですから、時間あたりの価値半分になっているということになります。
ムーアの法則をそのまま当てはめているわけではなく、4年毎に半減していますが、生産性が上がっている「はず」だという考え方に基づいていることは確かです。
ビットコインの発行上限2100万枚は全仮想通貨同じではない
仮想通貨の発行枚数を決定するのは、プロジェクトオーナーたちです。したがって人為的に決定されます。他の仮想通貨の発行枚数上限は通貨によってまちまちです。
代表的な仮想通貨の発行上限枚数
- オーガ(REP):1,100万枚
- モネロ(XMR):1,840万枚
- ジーキャッシュ(ZEC):2,100万枚
- ビットコイン(BTC):2,100万枚
- ダッシュ(DASH):2200万枚
- イーサリアム(ETH):7,200万枚
- ライトコイン(LTC):8400万枚
- モナコイン(MONA):1億512万枚
- ネム(XEM):9億枚
- リップル(XRP):1,000億枚
- イーサリアム クラシック(ETC):発行上限無し
- リスク(LISK):発行上限無し
- ファクトム(FCT):発行上限無し
ビットコインが発行上限2100万枚に達してもマイニングは続く
2140年頃にビットコインの発行枚数に達するわけですから、新たなビットコインを目的としたマイニングは行われません。発行上限に達した後、ビットコインのマイニングはどうなるのでしょうか。マイニングは継続すると考えることができます。なぜならマイニングの収益は採掘報酬だけではなく、送金手数料がマイナー(採掘者)に支払われているからです。現在は手数料が非常に安いと言われていますが、将来的には送金手数料が上昇することが予想されます。
ビットコインの送金手数料が上昇する仕組みは至って簡単です。AとBというビットコイン送金取引(トランザクション)が行われると、まず取引情報はブロックチェーンに登録される前に、プールと呼ばれるトランザクションの仮置き場に登録されます。
その後マイナーがブロックチェーンに登録・承認するのですが、どのトランザクションをブロックチェーンに登録するかは、マイナーの任意選択です。
経済主体であるマイナーの行動指針は、トランザクション登録にかかる費用(電気代や設備費)がもっとも早く回収できるトランザクションを登録・承認することです。こうして、マイニングで得られない報酬を手数料によって得るようになります。最短最速でトランザクションを完了させたい送金者たちは、ビットコイン送金手数料を高く設定することになり、送金手数料は上昇傾向になります。