ホーム / ビットコイン / 永久に流通しないビットコインがある。その額3兆円相当。

永久に流通しないビットコインがある。その額3兆円相当。

失ったものを数えるな。残ったものを数えよベニー・グッドマン(音楽家)

 

と言われても、数えます。失った430万BTC、残った1670万BTC。ビットコインは発行上限が2100万BTCで、1,700万BTCがマイニング済みです。そのうち430万BTCが行方不明と言われています。この世にあるビットコインの25%がブロックチェーンから動かせない、つまり売買や送金ができないと言われています。その額、3兆円相当です(1BTC=70万円計算)。

 

消えたビットコインの行方は永久に

 

ビットコインが消える、これは一体どういうことでしょうか。悪意あるハッカーが誰かのビットコインを盗んだとしても、それはハッカーに渡っただけで消えてはいません。ビットコインを送金するには秘密鍵が必要で、この秘密鍵が紛失すればブロックチェーンから移動できません。

 

秘密鍵が紛失する理由は、技術的なものやビットコイン所有者のウォレット紛失などが考えられます。ビットコインのマイニングを趣味としていたジェームス・ホール氏は自身のハードディスクにビットコインを保存していました。同氏は初期の頃のマイナーだったのですが、ビットコインの将来性を過小評価し趣味をやめ、ハードディスクを捨ててしまいました。その量は7.5万BTC、現在価値では520億円相当です。

 

また、BlockEx証券取引所CEOのアダム・レオナルド氏は、6,000ビットコインを永久に失いました。同氏は2010年にビジネスパートナーと6,000ビットコインを購入しました。ウォレットの番号とパスワードは、セキュアな電子メールサービスであるHushmailに保存されていました。それにもかかわらず、メールのパスワードは失い元に戻すことはできません。

 

消えたビットコインの行方は、秘密鍵の喪失を意味します。ブロックチェーンから移動できない、つまり通貨の価値を失ったブロックチェーンとも言えます。この事実は、考案者ナカモトサトシであろうとトランプ大統領であろうと、誰にも覆せない永遠の喪失なのです。

 

ビットコインの安全神話はヒューマンエラーで崩壊

 

上の2人の事例は、財産を失うという意味では恐ろしい事例です。ただ、逆に考えるとブロックチェーンの堅牢性の高さと言い換えることができます。秘密鍵なしではブロックチェーンに誰も侵入できないということです。

 

オープンなパブリックシステムであるにもかかわらず、確認はできても盗むことができないセキュアな仕組みです。もしビットコインの安全神話が崩壊するとしたら、それはヒューマンエラーによるものではないでしょうか。必要な秘密鍵を保管するウォレット・ファイルをうっかり消したり、紛失したり、盗まれたりすることです。

 

噂の域をでませんが、マウント・ゴックスの倒産も内部に協力者がいたと指摘されたことがありました。取引所のウォレットは取引所がユーザーの秘密鍵を持つ事が多く、秘密鍵を「信頼できる運営者」が管理しているからといってリスクであることは間違いありません。

 

消えたビットコインは希少価値を上げる

 

ユーザーがウォレットを失くしたとします。すると、その通貨は流通しません。紛失したビットコインは、他のビットコインと同様に、ブロックチェーン内に残っています。ただ、ウォレットを紛失している以上、それを使えるようにする秘密鍵を見つけることは誰にもできません。

 

紛失したビットコインは、何年たっても未使用のまま維持されます。需要と供給の法則に従い、使えるビットコインの数が減ると、残りのコインの需要が高まり、それを相殺するために価値が上がると考えられます。

 

430万枚が本当に失われているとしたら、ビットコイン発行上限2100万枚のうち20%、採掘済み枚数の25%が市場に供給されないため、単純計算したら25%の価格上昇要因となってもおかしくありません。

 

ビットコイン所有者の死後

 

 

縁起でもない話ですが、ビットコイン所有者が死んだらどうなるのでしょうか。銀行預金の場合は死亡した人の預金口座は一時凍結されます。遺言状の有無などによって手順は異なるものの、最終的には相続人に相続されます。

 

ビットコインはどうなるのでしょう。マイニングで、寄付で、購入で保有したビットコインを死後に家族に相続されるのでしょうか。ウォレットのパスフレーズや秘密鍵を遺言状に書いておくのが懸命でしょう。銀行口座と違って救済してくれる中央集権はいません。

 

ちなみに、家族に相続するなら相続税がかかります。ビットコインの残高を確認できたとしても、パスワードや秘密鍵がなくて救出できないとします。さて税務署は、取り出せないから相続財産に含めなくて良いと言うのでしょうか。

 

仮に相続できたとして、もし売却して利益がでたら所得税がかかります。売却金額-取得費が所得扱いで、所得額に20%課税されます。取得費がわかりませんとなると、上場株式と同じく、売却した金額の95%が取得費として計算されてしまうかもしれません。

 

秘密鍵の管理、そして取得価格の把握、ビットコイン保有の家族への周知はしておきたいものです。