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テザー疑惑は事実か?当局が動いた新たな仮想通貨不正疑惑。影響力はネム不正問題より絶大

ここ1月30日、31日とビットコインは下げ止まらず1万ドルを割りました。価格下落の原因と言われてるのがテザー問題です。日本国内では、ネム不正アクセス事件の渦中ですが、世界はテザー問題のほうがインパクトが大きいと考えています。

ただしテザー問題は、ここ数日始まった問題ではなく昨年9月頃から散々指摘されてきたものです。今になって取り沙汰されている理由は、テザーを発行するテザー社(Tether Limited)が米商品先物取引委員会(CFTC)に召喚されたと報道されたからです。

 

CFTCは、詐欺や市場操作などの不正行為の追求や、市場(マーケット)の取引監視の権限をもつアメリカの政府機関です。

 

テザー(Tether)というのは、仮想通貨の1つでシンボルはUSDTです。法定通貨の米ドルと同じ価値を持たせるドルペッグ制の仮想通貨で、ブロックチェーン版のドルと言えます。このテザーを発行しているのは、Tether Limitedという会社で、親会社はBitfinexです。

 

他のコインとの違いは、ドルペッグ制という点です。ユーザーがテザー社の銀行口座に1ドル入金すると、同額のテザー(USDT)が発行され、ユーザーのテザー口座にテザー(USDT)が入金される仕組みです。テザー社が保有するドルと同額のテザーを発行するプロセスをProof Of Reserves(プルーフ・オブ・リザーブ)と呼びます。

 

この仕組から分かる通り、テザー社は発行されたテザーと同額のドルを保有している(はず)です。ドルを準備金(リザーブ)として担保しているために、1USDT=1ドルという価格が維持されているのです。つまりドルの準備金が資金証明(POF:Proof of Fund)になっています。

 

このテザーコインに向けられた疑惑をきっかけにビットコインは大幅に下落しました。これをテザー問題と呼ぶと、テザー問題は2つに集約されます。

 

テザー問題の2つの論点

  • テザー発行数と同額のドルが担保されていない疑惑
  • 親会社のBitfinexがテザーを証拠金としてビットコインをレバレッジ取引疑惑

2と3は因果関係の構図です。ユーザーから集めたドルは、本来準備金として全て信託してあるべきです。しかし、テザー社と親会社のBitfinex社は調達したお金で、ビットコインを買っていた疑惑が持たれています。

 

その結果、テザー社のドル準備金は必要なドル資産を担保していないという疑惑につながっていきます。なお、テザー社は1度もドル保有の証拠を公開したこともありませんし、口座の監査も受けたことはありません。口座の監査を担当する予定だった監査法人がテザー社との契約を打ち切ったことが報道されています。

 

テザー問題に当局が動き、信用不安が走る

 

これらの指摘は2017年9月から既に出ておりましたが、この不安要素よりも買い圧力のほうが強く、半ば黙認されていた状況が続いていました。しかし、ここへきて米商品先物取引委員会(CFTC)が動き出したことがきっかけで疑惑の信憑性が増し、信用不安からビットコインの売り圧力が高まったのです。

 

また、1つの可能性として考えられるのはテザー社によるビットコイン売りです。ドルを準備金として担保しなければならないので、当局から指摘される前に手持ちのビットコインを売ってドルを買い戻す動きがあってもおかしくありません。

 

コインチェック社の問題は日本の1つの取引所の脆弱なセキュリティを突かれた問題です。今回のテザー問題は、発行されるべきではなかった大量のテザーで、ビットコインを売買し不正に価格を釣り上げていたという疑惑、問題です。疑惑が事実で、かつアメリカ当局のメスが入れば、これからまた仮想通貨全体が下げる可能性を秘めています。