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ケネス・ロゴフ教授のビットコイン予測「相場はいつか崩壊、規制を止める人はいない」

米ハーバード大学ケネス・ロゴフ教授による英国ガーディアン紙の記事「Bitcoin’s price bubble will burst under government pressure」によると、高騰したビットコイン相場はいつか崩壊する、ビットコインは最終的に政府が規制し、自分のものにするだろうと主張しています。抜粋妙訳します。

その前に、ケネス・ロゴフ教授の通貨に対する考え方を簡単に。

ケネス・ロゴフ教授が主張するレスキャッシュ社会

ケネス・ロゴフ教授は、国際マクロ経済を専門とする経済学者です。現金を廃止しレスキャッシュ社会を目指すべきと主張しています。(『現金の呪い――紙幣をいつ追放するか?』)。世界で現金を利用し続けることは違法取引や脱税を助長すると言い、高額紙幣を廃止し小額紙幣や硬貨にすることで、地下経済での大口現金取引を制限できると指摘しています。またマイナス金利を含めた金融政策の幅が広がると主張しています。

ロゴフ教授が主張するレスキャッシュ社会は、仮想通貨/暗号通貨「Bitcoin(ビットコイン)」の考えに近いと思われますが、本質的に違います。「レスキャッシュ」であって「キャッシュレス」ではありません

筆者が提案するのはあくまで「レスキャッシュ社会」(現金の少ない社会)への移行であって、けっして「キャッシュレス社会」(現金のない社会)を主張しているわけではないことだ。本文中でも、遠い将来にわたって、仮に中央銀行がデジタル通貨の導入に踏み切ってもなお、物理的な通貨を維持することは必要だと繰り返し主張している。

また、日本経済に造詣が深く日本の紙幣流通の90%を占める1万円札を廃止すべきとしています。

日本はまさに理想的な国と言えよう。レスキャッシュ社会へ移行する方法は一つではないが、おそらく最もシンプルで、最も非干渉的なやり方は、高額紙幣の段階的廃止であろう。なお段階的とは五~七年かけてゆっくり進めるという意味であり、まずは一万円札から始めるのがよいだろう。一万円札は、日本の通貨流通高のじつに九〇%以上を占めている。

余談ですが、日本の最高額の高額紙幣は1万円札です。世界を見渡すとシンガポールの1万ドル紙幣(約80万円相当)、スイス1000フラン紙幣(約12万円相当)、カナダ1000ドル紙幣(約8万円相当)といった高額紙幣が流通していいます。

仮想通貨への見立ては、崩壊と政府規制

さて、前置きが長くなりましたがケネス・ロゴフ教授が指摘するビットコイン像。

My best guess is that in the long run, the technology will thrive, but that the price of bitcoin will collapse.

仮想通貨の技術は今後も発展するだろうが、高騰したビットコイン相場はいずれ崩壊する。

そして今後の展開は政府次第という。現時点のビットコイン規制は各国それぞれです。中国政府はキャピタルフライト(資本逃避)や詐欺に悪用されることを恐れ、ビットコイン取引を禁止しました。

一方で、日本はビットコインを仮想の通貨として認めました。ロゴフ教授は、米国も日本に続くだろうと予想していますが、最終的な規制の形は全く未知数としています。

ロゴフ教授はまた、日本は世界第三位の経済大国だが現金流通残高は国内総生産の20%を占め、現金主義の傾向が他国に比べて高いと指摘しています。そうした現金至上主義の国で仮想通貨ビットコインが成功を収めているのは、大きな勝利(major triumph)だと語っています。

しかしビットコインが中央銀行発行の法定通貨に取って代わると思ったら、それは大間違いだと主張しています。仮想通貨による匿名決済を一部認めるのと、大規模に行われるのを認めるのは話の次元が異なると。政府は税金の徴収や犯罪対策が困難になってまで許容することはないだろうと。

重要なことは、中央銀行が自前のデジタルキャッシュ(電子通貨)を発行したり、仮想通貨の規制を変更するのを誰も止めることはできないということだと言います。

The long history of currency tells us that what the private sector innovates, the state eventually regulates and appropriates.
I have no idea where bitcoin’s price will go over the next couple years, but there is no reason to expect virtual currency to avoid a similar fate.

通貨の長い歴史が教えるように、民間セクターが新たに生み出したものは、最終的に政府は規制化し、政府のものにしてしまう。仮想通貨が同じ運命から逃れられると考える理由は、どこにもない、とロゴフ教授は指摘しています。