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マイナーの影響力の強さを垣間見たビットコインキャッシュ急騰とビットコイン急落

ビットコイン(BTC)が暴落し、ビットコインキャッシュ(BCH)とビットコインゴールド(BTG)先物は上昇しています。ビットコイン(BTC)は11月8日に7600ドルを付けてから、1100ドル近く下落し現在では6100ドル前後で推移しています。一方、ビットコインキャッシュは1600ドルに届く勢いで、ビットコインの1/4に迫る勢いです。

様々な仮想通貨がある中で、なぜビットコインキャッシュが急騰し、ビットコインが下落したのでしょうか。この2つの通貨ペアの鍵を握るのは「マイナー(採掘者)の思惑」です。

 

ビットコインキャッシュ上昇、ビットコイン下落の構図

 

ビットコインキャッシュ(BCH)の価格推移(11月8日〜11月12日)

 

ビットコイン(BTC)の価格推移(11月8日〜11月12日)

 

ビットコイン価格が下落しビットコインキャッシュ価格が上昇した原因、理由はビットコインマイナー(採掘者)、マイニング事業者がビットコインキャッシュのマイニングに移ったことです。おかげでビットコインのマイニングが行われなくなり、送金詰まりを起こしています。直近のマイニング状況を見てみると、ビットコインのブロック生成間隔は20分に1回です。ビットコインキャッシュで約2分に1回の間隔です。

 

なぜビットコインキャッシュ(BCH)をマイニングするのか

 

なぜ、マイナーはビットコインのマイニングをやめて、ビットコインキャッシュをマイニングしたのでしょうか。答えはシンプルでそっちのほうが「儲かるから」です。マイニングはボランティア活動ではなく利益を追求するビジネス活動です。つまり、マイナーは、ビットコインキャッシュを採掘するほうが儲かると判断したのです。

 

マイナーが得る利益は取引処理を行う毎に得る「取引手数料」とブロック作成毎に発生する「報酬料」の合計です。ブロック作成時に得られる報酬は、採掘した通貨です。ビットコインキャッシュを採掘しても、価格が形成されていなければマイニングする動機になりません。最近のビットコインキャッシュの急騰は、ビットコインキャッシュのマイナーにとって大きなインセンティブになっているのです。

 

ちなみに、ビットコインキャッシュが生まれた8月1日のハードフォーク直後は、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)の採掘の難しさ(ディフィカルティ)は同じでした。当時の価値で計算するとビットコイン100に対してビットコインキャッシュは20%にしか過ぎず、同じ労力(電気代や難易度)でビットコインキャッシュを採掘するメリットはありませんでした。

 

また、こうした可能性を予測してこのようなルールが設定されていました。「過去12時間以内にマイニングされたブロックの数が6以下であれば、次のブロックから難易度を20%下げます」というルールです。つまり、取引量が少ないのにブロック生成に時間を要するなら、採掘難易度を下げるということです。そうすると、経費削減(電気代)につながりマイナーにとって採掘するメリットが大きくなります。難易度調整が繰り返されるとどうなるでしょうか。

 

ビットコイン採掘に100の労力をかけて200の報酬をもらうよりも、ビットコインキャッシュの採掘に10の労力をかけて30の報酬をもらうほうが儲かります。いまビットコインとビットコインキャッシュの間で起きているマイナーの心理はこのような事です。経済合理性に照らし合わせて、もっとも効率よく利益がでる方法としてビットコインキャッシュが選ばれていると言えます。

 

ビットコインキャッシュへの移行を促すある匿名文章

 

11月1日にあるマイナーから、マイナー事業者向けに、「An open letter to Bitcoin and Bitcoin Cash miners from another miner」と題する匿名文章が公開されました。要点だけ絞ると、

 

マイナーは、ビットコインの難易度調整が上がった瞬間に、全てのマイニングパワーをビットコインキャッシュに切り替えるべき。ビットコインのブロックチェーンが完全に減速・フリーズすることを望むんでいる。最終的にビットコインのトランザクションが確認できなくなり崩壊する。その後、ビットコインキャッシュが真の「ビットコイン」となるだろう。

 

としています。この文章の影響力がどれほどのものかは、知ることができませんが、マイナー達がビットコインのマイニングを停止し、ビットコインキャッシュへ移行したことは確かなことです。

 

 

ビットコインキャッシュを買う韓国勢

 

ビットコインキャッシュの難易度がいくら下がっても、だれも売買しなければマイニングの機会もなく、価格も形成されません。ビットコインは日本円建ての割合が多いのが特徴ですが、ビットコインキャッシュは韓国通貨(ウォン)建ての取引が多いです。

 

ピンクが韓国ウォン建ての取引(ビットコインキャッシュ)

ビットコインキャッシュ韓国

 

ビットコインキャッシュが真のビットコインとなるか

 

この相場を恒久的なものとみなすか、一時的な調整とみなすかは、判断が分かれています。投機筋からすれば、短期的にビットコイン売却、ビットコインキャッシュ購入の流れになりますが、個人的にはビットコインがビットコインキャッシュに代替されるようなことはないと思います。

 

価格動向よりも重要なのは、あるマイナーの発言やマイナーの動き1つで価格が大きく左右される(されてしまう)ことです。マイナーの影響力が極めて高い市場ということは頭に入れておきたいです。

 

仮想通貨の市場全体は拡大傾向

 

仮想通貨全体の時価総額

 

仮想通貨の代表格ビットコインが下落しており、仮想通貨全体の時価総額が下がっているかと考えていましたが、多少の調整局面はありますが、仮想通貨全体の時価総額をみるとこの1ヶ月で約30%ほど上昇しています。ビットコインの価格下落は、仮想通貨全体のトレンドではなくビットコインとビットコインキャッシュの覇権争いの構図であると考えられます。